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新基準で変わったことは?日本ワインと”ワイン法”について

2019年1月3日

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新基準で変わったことは?日本ワインと”ワイン法”について

ワイン法とは 平成27年10月30日 に告示され、2018年の10月30日から施行された「果実酒等の製法品質表示基準」のことです。日本でのワイン生産が増えるに従い、ブランド確立や品質のアピールの為に新たな枠組みが必要との認識からヨーロッパの産地呼称制度などを参考に作られました。

では、この新しい基準についてみていきます。

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定義

定義

1 次の各号に掲げる用語の定義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 「国内製造ワイン」とは、酒税法第3条第13号に規定する果実酒及び同条第14号に規定する甘味果実酒(以下「果実酒等」という。)のうち、国内で製造(同一の酒類の品目の果実酒等との混和を含む。以下同じ。)したもの(輸入ワインを除く。)をいう。
(2) 「原材料」とは、酒税法第3条第13号及び第14号に掲げる原料並びに混和した果実酒等をいう。
(3) 「日本ワイン」とは、国内製造ワインのうち、酒税法第3条第13号に掲げる果実酒(原料として水を使用したものを除く。)(同号ニに掲げる果実酒にあっては、別表に掲げる製法により製造したものに限る。)で、原料の果実として国内で収穫されたぶどうのみを使用したものをいう。
(4) 「輸入ワイン」とは、保税地域(関税法(昭和29年法律第61号)第29条に規定する保税地域をいう。)から引き取る果実酒等(当該引取り後、詰め替えて販売するものを含む。)をいう。

国税庁 「 果実酒等の製法品質表示基準 」より

ワインは次の3つの区分に分かれます。「日本ワイン」、「国内製造ワイン」、「輸入ワイン」

日本ワインは日本で作った原材料(ぶどう)を日本国内で醸造、熟成、瓶詰したものということになります。海外の原料を少しでも使った場合は日本ワインと名乗ることはできず、その場合は国内製造ワインとなります。

記載事項の表示

2 次の各号に掲げる事項は、それぞれ当該各号に掲げるところにより、果実酒等の容器又は包装に表示するものとする。
(1) 日本ワイン日本ワインには、「日本ワイン」と表示する。
(2) 原材料名国内製造ワインには、次に掲げる原材料を使用量の多い順にそれぞれ次に掲げるところにより表示する。
イ 果実
 果実(濃縮果汁を除く。以下この項において同じ。)の名称を表示する。 
 なお、三種類以上の果実を使用した場合は、使用量が上位三位以下の果実の名称を「その他果実」と表示することができる。
ロ 濃縮果汁
 濃縮果汁を希釈したものは「濃縮還元○○果汁」と、濃縮果汁を希釈していないものは「濃縮○○果汁」と表示する。この場合において、「○○」については、果実の名称を記載するものとする。 
 なお、三種類以上の果実の濃縮果汁を使用した場合は、使用量が上位三位以下の果実の濃縮果汁の名称を「濃縮還元その他果汁」又は「濃縮その他果汁」と表示することができる。
ハ 輸入ワイン 
 「輸入ワイン」と表示する。
ニ 国内製造ワイン
 使用した国内製造ワインの原材料を、原材料とみなしてイからハまでの規定により表示する。
(3) 原材料の原産地名国内製造ワインには、前号イ及びロに掲げる原材料(同号ニの規定により同号イ及びロの原材料を表示する場合を含む。)の原産地名を「日本産」又は「外国産」と表示する。ただし、日本産の表示に代えて都道府県名その他の地名を、外国産の表示に代えて原産国名(関税法施行令(昭和29年政令第150号)第59条第1項に規定する輸入申告書に記載する原産地名をいう。以下同じ。)をそれぞれ表示することができる。 
 なお、同号ハの原材料(同号ニの規定により同号ハの原材料を表示する場合を含む。)として使用した輸入ワインの表示には、その原産国名を併せて表示することができる。
(4) 原産国名輸入ワインには、当該輸入ワインの原産国名を表示する。

国税庁 「 果実酒等の製法品質表示基準 」より

日本ワインには、「日本ワイン」と表示する。当たり前ですね。

原材料は国内産か外国産という大まかな区分のほかに、含有量によりますが○○県産とか地域産、またはフランス産(輸入ワインの場合)のように地名を指定して書いてもよいです。しかし、ワインは作り手のこだわり、テロワール(この言葉は賛否両論ですが)、「ワインは風景がつくる」といった考え方からすると、国内のどこで収穫されたかというのは非常に重要です。そして、産地に加え、ワインメーカーの想い、立ち上げまでのストーリーや、土地・風景が醸し出す雰囲気、ブランド、歴史といった要素を掛け合わせることが必要になってきます。そうすることで、2,000円、3,000円、それ以上の価格のワインをブランディングしていくことが出来るということになります。

いつかワインのブランディングに関する投稿もしたいと思います。

特定の原材料を使用した旨の表示

3 国内製造ワイン(原料の果実としてぶどう以外の果実を使用したものを除く。第5項から第7項までにおいて同じ。)には、前項のほか、次の各号に掲げる表示をその容器又は包装の主たる商標(商標法(昭和34年法律第127号)第2条第1項に規定する商標をいう。以下同じ。)を表示する側に行うものとする。
(1) 原材料に濃縮果汁を使用したもの(原料として水を使用したものに限る。)については、「濃縮果汁使用」など、濃縮果汁を使用したことが分かる表示
(2) 原材料に輸入ワインを使用したものについては、「輸入ワイン使用」など、輸入ワインを使用したことが分かる表示

国税庁 「 果実酒等の製法品質表示基準 」より

濃縮果汁を使ったワインが多く出回っているということでこういう区別がきちんとされる必要があるということですね。濃縮果汁と輸入ワインをブレンドして国内製造ワインというものもたくさんあります。

ぶどう以外の果実を使用した旨の表示

4 原料の果実としてぶどう以外の果実を使用した国内製造ワインには、第2項のほか、その果実を使用したことが分かる表示をその容器又は包装の主たる商標を表示する側に行うものとする。

国税庁 「 果実酒等の製法品質表示基準 」より

ぶどう以外を原材料に用いた国内製造ワインは、きちんとわかるように表示しなさいということですね。

地名の表示

5 国内製造ワインに地名を表示する場合は、第2項第3号の規定による表示のほか、日本ワインに限り、次の各号に掲げる地名のみをその容器又は包装に表示できるものとする。
(1) 原料として使用したぶどうのうち、同一の収穫地で収穫されたものを85パーセント以上使用した場合の当該収穫地を含む地名(表示する地名が示す範囲に醸造地がない場合には、「○○産ぶどう使用」など、ぶどうの収穫地を含む地名であることが分かる方法により表示するものとする。この場合において、「○○」については、当該ぶどうの収穫地を含む地名を記載するものとする。)
(2) 醸造地を含む地名(醸造地を含む地名であることが分かる方法により表示を行うとともに、別途、ぶどうの収穫地を含む地名ではないことが分かる表示を行うものとする。)

国税庁 「 果実酒等の製法品質表示基準 」より

使っているぶどうの85%以上が同一地域ならば「その地域産」と書けということです。

加えて、醸造した場所も表示しなければならないんですね。

ぶどうの品種名の表示

6 国内製造ワインの原料として使用したぶどうの品種名については、次の各号に掲げるものであって、表示するぶどうの品種の使用量の合計が85パーセント以上を占める場合に限り、当該ぶどうの品種名をその容器又は包装に表示できるものとする。この場合において、第8項第1号に規定する別記様式以外への表示は、日本ワインに限り、表示できるものとする。
(1) 使用量の最も多いぶどうの品種名
(2) 使用量の多い上位二品種のぶどうの品種名(使用量の多い順に表示するものとする。)
(3) 使用量の多い上位三品種以上のぶどうの品種名(それぞれに使用量の割合を併記し、かつ、使用量の多い順に表示するものとする。)

国税庁 「 果実酒等の製法品質表示基準 」より

上位3種類の品種の使用料合計が85%以上である場合に限って、その3つの品種を表示してもよいということですね。4品種以上混ぜて、4種類目が結構多くて16%とかになった場合はぶどうの品種を表示してはいけないということ。気を付けましょう。

ぶどうの収穫年の表示

7 国内製造ワインの原料として使用したぶどうの収穫年については、表示する収穫年に収穫したぶどうの使用量が85パーセント以上を占める日本ワインに限り、その容器又は包装に表示できるものとする。

国税庁 「 果実酒等の製法品質表示基準 」より

ヴィンテージの表示も6項と似たような感じです。85%以上が同一年収穫ならばヴィンテージとして何年物と表示できます。

表示の方式等

8 第2項の規定により表示する事項及び法第86条の5の規定に基づき表示する酒類の品目、酒類製造業者の氏名又は名称、製造場の所在地、内容量、アルコール分等については、次に定めるところにより表示する。
(1) 表示の方式別記様式により表示する。ただし、別記様式による表示と同等程度に分かりやすく一括して表示することとして差し支えない。
(2) 表示に使用する文字
表示(酒類の品目の表示を除く。)に使用する文字は、8ポイント(日本工業規格Z8305(1962)に規定するポイントをいう。以下同じ。)の活字以上の大きさの統一のとれた日本文字とする。ただし、容量200ミリリットル以下の容器にあっては、6ポイントの活字以上の大きさとして差し支えない。
9 第3項の規定による表示に使用する文字は、10.5ポイントの活字以上の大きさの統一のとれた日本文字とする。ただし、容量360ミリリットル以下の容器にあっては、7.5ポイントの活字以上の大きさとして差し支えない。

国税庁 「 果実酒等の製法品質表示基準 」より

表示は見やすく適切に。

国税庁 「 果実酒等の製法品質表示基準 」より

備考


1 日本ワインに該当する場合は、「日本ワイン」と表示する。
2 発泡性を有する果実酒等(アルコール分が10度未満のものに限る。)である場合は、酒類の品目に続けて発泡性を有する旨及び税率の適用区分を表す事項を表示する。なお、酒類の品目は、容器又は包装の主たる商標を表示する側に表示した場合には省略することができる。
3 原材料の原産地名は、原材料名の次に括弧を付して表示する。
4 酒類製造業者の氏名又は名称及び製造場の所在地等は、「製造者」等として表示する。なお、その記載に当たっては、食品表示法(平成25年法律第70号)の規定に従うものとする。
5 内容量は、酒類の品目とともに主たる商標を表示する側に表示した場合には省略することができる。
6 この様式は、縦書きとすることができる。
7 この様式に掲げる表示のほか、食品表示法その他法令により表示すべき事項及び消費者の選択に資する適切な表示事項を枠内に表示することができる。
8 この様式の枠を表示することが困難な場合には、枠を省略することができる。
9 「日本ワイン」の表示に続き表示する項目は、任意の順に表示することができる。

国税庁 「 果実酒等の製法品質表示基準 」より

附則

この告示の規定は、この告示の適用の日前に果実酒等を容器の容量分充
塡した容器に対する表示又は当該容器の包装に対する表示については、適用しない。

国税庁 「 果実酒等の製法品質表示基準 」より
充てん

余談ですが、国税庁のページでは「充塡 」という漢字は左のような画像に置き換えられていました。何ででしょうね。正しく表示できない機種が世の中に存在するのかもしれません。

別表(第1項第3号関係)

1 他の容器に移し替えることなく移出することを予定した容器内で発酵させた果実酒について、発酵後、当該容器にブランデー、糖類、香味料(国内で収穫されたぶどうの果汁又は当該ぶどうの濃縮果汁に限る。)又は日本ワインを加える製法
2 酒税法第3条第13号イからハまでに掲げる果実酒に、香味料(国内で収穫されたぶどうの果汁又は当該ぶどうの濃縮果汁に限る。)を加える製法(当該加える香味料に含有される糖類の重量が当該香味料を加えた後の果実酒の重量の100分の10を超えないものに限る。)
3 酒税法第3条第13号イからハまでに掲げる果実酒に糖類を加える製法

国税庁 「 果実酒等の製法品質表示基準 」より

まとめ

日本ワインと名乗るためには、国内製造ぶどうを使用した場合のみ。

ぶどう産地を表示できるのは上位85%以上がその地域で採れたぶどうである場合のみです。逆に言うと、産地を表示するためは15%までならば国内の別の場所から調達したぶどうを用いてよいということになります。ぶどうの品種名表示についても上位3種類で85%以上締めているのであればその3種類を表示してよいことになりますので、15%までならほかの地域のぶどうを使用して、かつ表示し無くで良いです。

ワイナリーの経営はリスクとの戦いであるケースが多いので、この15%をどうとらえてワイン造りをするのかはワイナリーを経営する方によって判断が分かれるところではないでしょうか。

酒税法をきちんと読むことも経営への示唆を与えてくれることがわかりました。

この表示基準についてのQ&Aが国税庁のウェブサイトに載っています。いろいろなケースについて参考になる情報ですので要チェックです。

http://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/kajitsushu/kokuji160630/wineqa.pdf